「逃げたGPライダーを追え!!」 3 魔の出逢い その1

魔の出逢い その1

そんな最中、一組の夫婦が、不動産屋に案内され、「清水建築工房」にやってきた。
その客は、前に建てた家に漏水が発生し、更に、その次に住んだ家にも漏水が発生
し、長い間、漏水に悩まされ続けていた。
「今度こそ、漏水の無い家で穏やかな日々を送りたい・・その願いを是非叶えて貰え
ないだろうか・・
開口一番、客は社長に切に訴えた。 
家を新築する目的は、そこにあるのだから・・・
    しかし、それを聞いていた社長の頭の中は、  
                        「客を取って金を稼ぎたい。そして贅沢な生活がしたい」  
    その一心だった。
    田舎の小さな工務店であれ、「社長!」と呼ばれる事が嬉しかった。
社長には、客の切なる願いなど届いていない。
     社長は、       「客を、絶対に他の工務店に取られたくない」
             「契約を取り付けるまでが勝負だ!!」
             「その為には、何をしたらいいか??」 

             ・やる気の有る、積極的な会社だと思わせればいい
             ・熱心なヤツを演じればいい  
一方的に、「清水建築工房」からは、毎日毎日、せっせと間取り図が、ファクスで
送られてきた。
「契約も、まだしていないのに・・・なんでこんなに急ぐの??」
「これって熱心なの??他の会社とは違うぞ??」 
客は不思議に思った。
それでも、次から次へと、新しい間取り図が、提案と称して、ファックスで送られてきた。
    そして社長は  ・ショールームを兼ねていた自宅兼事務所の内部を案内した
                 ・工事中の現場にも連れて行った
                  材木には、相当、自信が有ったようだ
                  使用している紀州材を得意げに見せて回った
                 ・実際に住んでいる家にも案内し、住み心地を聞かせた
これでも客は、なかなか契約に応じようとはしない。
客にとって、家は一生に一度の大きな買い物である。
A社、B社、C社・・・どこに頼むべきか、客は、慎重に、比較検討して歩く事に時間
を割いた。 
他の業者や設計士にも、相談して回った。
契約がまとまらなければ、設計図など時期早尚・・・もっともっと時間をかけて、慎重
に工務店を選びたい・・・客は、そう考えていた。
                    「 狙った客は、絶対に逃したくない」
              「なのに、客がなかなか契約に同意して呉れない」 
そこで、社長は次の手を考えた。
             「紀州杉は乾燥させるまで、相当時間がかかるんです」
              「今、契約しないと、いい紀州杉が手に入りませんよ」
そう言って、社長自らが出向いて客を説得するやり方。
              「設計は、契約してからじっくりまとめればいい」とも言った。
海千山千の男である。
客の前では、不誠実さなど片鱗も見せない。
契約が成立するまで、仕事熱心な男を演ずる・・・ここまでが、彼の大仕事。
              「紀州杉」「漆喰の壁」、そして「洒落た南仏風の外観や内装」
              
客の前にニンジンをぶらさげて、客が食いつくのをじっと待つ
これが、社長の攻め方。 
  
じゃ、なぜ? 
「地元の工務店は、地元の客を裏切らない」と、よく言われる。
点検、故障や不具合を直して貰ったり、工務店と客は一生の付き合いになる。
近所に住めば、尚の事、下手な工事など出来ない。
それが、地元の工務店に頼む利点と考えていた。
また、小さい会社だからこそ、規格品ではなく、小さな会社にしか出来ない、柔軟で、
思い切った試みや発想が生まれるかも知れない!という期待も有った。
その上、地元の小さな工務店を応援したい・・・という気持も湧いた。
まさか、その思いの全てが、後からアダとなって客に撥ね帰ってこようとは、
誰が想像出来るか。

・契約を済ませた後に、手のひらを返したように、180度、態度を変える人間がいる事。
・表には見えないけれど、裏では、必死に自転車操業を行っている工務店が有る事。
・有名幼稚舎のお受験など、小さな工務店のお家事情に、客が巻き込まれる危険性
  が有る事。
・資格を持った建築士が、建築の専門知識が無い、根本的な、基礎的な工事も出来
 ないで、紀州杉だと?漆喰の壁だと?洒落た設計だと?
 
どんなに鮮度の良い、めずらしい材料を手に入れた所で、料理を知らない人間が
 料理をすれば、台無しになる。
 紀州杉も、漆喰壁も、洒落た南仏風も・・・しっかりとした知識と技術が有ってこそ
 初めて生きる。

それなのに、残念ながら、契約の時点では、これらのことを見抜く事は出来ない。
全部、後になってからわかった事である。

清水氏は、4月6日に契約書を取り交わす事に成功した。
客が初めて、事務所に来た1月15日から、3か月後のことであった。




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欠陥住宅を建てて逃げた茅ヶ崎市の清水建築工房の社長を追っています。御存知の方はお知らせください。

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